【お金合同03】自販機が嫌いなお金(聖 那由多)
◆ひとくち紹介
「自販機には好きなお金と嫌いなお金がある」
謝肉祭の準備で慌ただしいトリニティ総合学園で、そんな奇妙な噂を耳にした先生。
曰く、トリニティ各所に置かれている飲料の自動販売機が、「お金」の選り好みをするというのだ。
生徒たちの軽い冗談かもしれない。
最初はそう思った先生だったが、なぜか妙に気になってしまい、独自に調査を開始する。
「お金」をテーマにした、青春ミステリの王道作。
生徒たちの想いの重なりを紐解いていく、かすかな痛みにも似た感覚が読者を刺激します。
◆読了後の感想(ネタバレ無し)
聖 那由多先生による日常の謎です。
皆様も、自販機にお金が入らない経験ってありませんか? 私は特に100円玉でそうなりがちです。
今作は先生の一人称視点で進んでいきます。特筆するべきは、先生の語り口調です。
淡々としつつ、目に映るものへの洞察を欠かさない。感情表出が控えめに思えるのは、大人の余裕でしょうか。
一人称視点の小説は、地の文(=主人公の視点)の運び方で、かなり味わいが変わってきます。
味の感じ方には個人差もあると思いますが、かなり好みの味付けです。
淡々としている、と上述しましたが、それは淡白であることを意味しません。むしろコクがあり、味わい深い……あごだしで作った醤油ラーメンみたいな感じです(誰にも伝わらない例え)
あと、こんな感じの先生が身近にいたらモテそう。メロすぎる。
……さて、本作の作品紹介では、「青春ミステリの王道作」と記載いたしました。
ブルーアーカイブという作品に登場する生徒たちは、強大な権力を持っていたり、はるかに頭が良かったり、もしくは戦略兵器並みに強力だったりと、私たちから見るととても遠い存在に思えます。
しかし本作は、「高校生としての生徒たち」を鮮やかに描きます。
等身大の彼女たちの想いが重なる様相は、まさに青春の物語といえるのではないでしょうか。
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